《医師直筆》人間の基礎代謝の仕組みをダイエットに活かそう
こんにちは。からだプラン代表医師の橋本です。
普段は内科医として働いています。
からだプランにお越し頂き、ありがとうございます。
皆さんもご存知の通り、病院にはたくさんの患者さんが来院します。
その中には、ゆっくり時間をかけてお話しすることが出来たら、きっと良くなるだろうな、と思う患者さんも沢山います。
そこで、からだプランの出番です!
からだプランでは「楽しく、正しく、いい身体♪」をモットーに、医学をたくさんの方に楽しんでもらえるよう、健康コラムを書いています。
今回は「人を入院させて初めて分かるエネルギーの観点」というタイトルでコラムを書きたいと思います。
実は私、研修医になるまでは、人は食べて動いて寝るもんだ、ぐらいにしか考えていませんでした。
そして、研修医になり入院患者さんを持った時に、初めて納得したのが、「エネルギー」という観点でした。
もしこれを、医師でない人でも理解できれば、健康面でも大きな武器になると思い、コラムを書きます。
まずはいつも通り、病院での会話をご紹介したいと思います。
看護師さん
「先生、さっき外来で話してた患者さん、入院させるの!?」
研修医時代の橋本
「え、あ、はい!入院したいって言ってて、断れないっしょ!」
看護師さん
「じゃあ早く指示出して!指示!」
研修医時代の橋本
「あ、そりゃあ指示出さなきゃね!えっと、えっと、ん?何すればいいの?」
看護師さん
「あ~もう、これだから新人は!えっと、これとこれにサインして、ここに入院指示書があるから、これにどんどん書いていって!」
研修医時代の橋本
「はい!了解でやんす!え~~っと、3南病棟の、主治医は自分と上司と。あ、食事なんてのも書く場所があるのか。えっと、何々?常食で、、、え、カロリーなんて書く場所もあるの!?どうしよう、やべ、なんか計算式あったなあ(´・ω・`)」
看護師さん
「あ~~忙しい忙しい!早く書いてよね!」
結局恐ろしい食事量の指示を出して、後でこっぴどく怒られた橋本であった、、、。
目次
☆入院患者の例から考える、基礎代謝の話
入院患者の食事制限
先程の会話でもあった通り、患者さんが入院する時には、医師は食事の指示を出します。
なにしろ入院患者というのは、なにかしらの治療が必要な状態であるから入院をしているわけです。
基本的には、弱った状態で集中的なケアが必要であったり、今後の治療をうまくいかせるために、生活なども完璧にコントロールする必要があるからこそ、入院しているのです。
そうであるからこそ、医師は入院患者の食生活についても、さまざまなことを検討する必要があるのです。
一例をあげるなら、普通のご飯なのか、それとも腎臓が悪い人向けの塩分が控えめのご飯なのか、のどに詰まりにくい柔らかい食事なのか、それとも絶食にして輸液で管理するのか、といったことです。
人それぞれ病状もその重さも異なります。
適切な指示にしなければ命にも危険が及びかねないので、慎重に考えなければなりません。
また、カロリーについても考えます。
栄養失調で入院している患者さんには、当然カロリーが高めの食事にしてもらいたいですし、糖尿病や肥満の患者さんには、普段と比べて少し物足りないぐらいのカロリーの食事になります。
あるいは、自分の口から食事がとれない患者さんには、点滴・輸液で必要な栄養を確保しなければなりません。
こうした患者さんの健康のために、あなただったら、どんな食事を、どれだけ与えればよいと考えますか?
患者さんの健康は自分に委ねられていると思って、ぜひ自分ごととして考えてもらいたいと思います。
基礎代謝に具体的なイメージで理解しよう
このように、基本的にベットでずっと安静にしている必要のある入院患者のための食事について考えること、これはすなわち、「人間がただ生命を維持しておくだけで消費していくエネルギー量を見積もるということ」を直感的に理解するのに非常に有用です。
こうした意識的な運動によらずに消耗していくエネルギーの消費は、基礎代謝と言われます。
入院患者の食生活の管理という具体的な問題を考えてみることは、「基礎代謝」という難しそうな医学用語を、誰にでも簡単に理解できるイメージの世界に、私たちをぐっと近づけてくれることでしょう。
☆人間の基礎代謝について学ぼう
そもそも代謝とは
まずは基本からおさらいです。では早速ですが、問題です。
あまり難しく考えず、次の問題を解いてみてください。引き算です。
①人間の身体に、食事で1000キロカロリーのエネルギーが入りました。
②人間の身体から、運動で500キロカロリーのエネルギーが出ていきました。
③さて、人間の身体には、どれくらいのエネルギーが残ったでしょうか。
答えは簡単ですね。1000-50=500キロカロリーです。これが人間とエネルギーの仕組みです。
この例で言えば、運動によってエネルギーが出て行くことを、代謝と言います。
まとめると、入ってくるエネルギーと出ていくエネルギーのバランスを考える事が、痩せたり太ったりすることに関係してくる、という事です。
そして、入院患者に供給すべきエネルギー量は、ベットで安静にしている状態でのその人の代謝、つまり基礎代謝から考えていくことになるということです。
基礎代謝とはなにか
何もせずにただじっとしていても、生命を維持するために勝手に消費されていくエネルギーのことは、科学的には、基礎代謝と言います。
人間は、特に意識して運動をしようとしなくても、エネルギーを消費していくものなのです。
意識的に外に出て、走ったりスポーツをしたり筋トレをしたり、、、ということだけが、運動なのではありません。
ただ生きているだけでも、人は心臓を動かし、全身に血液を送り、内臓を動かし、まばたきをし、というように、無数の運動をしています。
これらも、カロリーの消費に関わるという意味では、立派な運動でしょう。
それどこか、ただ生きているだけでも、私たちの体温は、一定の温度にまで温められています。
こうしたことにもたくさんのエネルギーが使われています。
つまり、人はただ生きるだけでも運動をしていることになるし、ここでも多くのエネルギーを消費しているのです。
つまり、たとえベッドで安静にしていなければならない入院患者であっても、生きている限り、基礎代謝にあたるエネルギーは食事から賄う必要があるのです。
基礎代謝はどのようにして決まるか
ではこの基礎代謝は、どのようにして決まってくるものなのでしょう。代謝は一般的に、女性よりも男性、老人よりは若者のほうが高くなりやすいです。
こうした傾向が生まれる主な理由は、筋肉と深い関係があります。
一度ついた筋肉を維持することにはすごく大きなエネルギーがいるので、筋肉質な体つきを一度つくれば、筋肉を維持するために多くのエネルギーは消費していくし、筋肉が落ちていけば、摂取エネルギーの多くが筋肉には使われず、結果的に太りやすくなるということなのです。
たとえば、年齢でも違います。
80歳のヨタヨタのおじいさんの運動量と、18歳の高校球児の運動量では、かりに両者が全然運動してなかったとしても、高校球児のほうが太りにくいということがいえます。
これは体に元からついている筋肉量の差が、主な理由と言えるでしょう。
☆食事制限と栄養の関係について学ぼう
健康的なダイエットのためには、食事制限よりも運動が大切!
ここからは少しずつ、入院患者の例からは離れた話になっていきます。
ここまでのところで、私たちは、たとえずっと安静にしている入院患者でもお腹が空くのと同じように、基礎代謝がある以上、生きている限りエネルギーを消費していくということです。
ここから、例えばひとつ、ダイエットというものについて考えてみましょう。
ダイエットを健康的に行うためには、食事を減らすアプローチはあまりおすすめできません。
なぜなら、食事はただ単にエネルギーを摂取するためだけではなく、五大栄養素をはじめとする、様々な栄養摂取のためにするものでもあるからです。
じっと安静にしている入院患者にも、医者はその人の基礎代謝を見積もって、供給すべきエネルギーを調整します。
じっとしているからといって、なにもエネルギーが一切供給されなければ、餓死してしまうからです。
同様に、日中健康的に動き回りたいあなたがご飯を抜いてまでダイエットをするなどということも、不健康という他ありません。
栄養失調のリスクという意味では、きわめて危険なことと言えるでしょう。
そういった意味でも、食事はきちんとするようにしましょう!
医学用語も、具体的なイメージと紐づければ簡単
今回は、基礎代謝という一見わかりにくい医学用語を、入院患者の例をとってご紹介しました。
医学や生物にかかわる用語は一見難しく見えることも多いですが、それらは私たちの身体や健康にかかわる、身近な話である場合も少なくありません。
わかりやすく具体的に、自分に実践できるところまで噛み砕いて理解していくことで、あなたの健康リテラシーも日に日に向上していくことでしょう。からだプランでも、そうした有益な情報発信を行なっていきます。